【帯広の歯学博士が解説】「急にむし歯が増えた」「歯ぐきが腫れる」…その裏に潜む唾液不足と「3つの防衛線」(唾液シリーズ第2回)
26.08.12(水)
帯広市のいしかわ歯科(歯科医師・歯学博士)が、唾液が持つ「3つの防衛線(自浄・抗菌、再石灰化、粘膜保護)」について詳しく解説します。毎日歯磨きをしているのにむし歯が急増する方、お口の渇きが気になる方は必見です。ドライマウスがなぜ恐ろしいのか、そのメカニズムを知って予防に繋げましょう。
■ はじめに:磨いているのに、なぜむし歯が増えるのか?
こんにちは。北海道帯広市の「いしかわ歯科」院長(歯科医師・歯学博士)です。
前回の「唾液シリーズ第1回」では、朝起きたときの口のネバネバや、パンなど乾いた食べ物の飲み込みにくさといった、ドライマウス(口腔乾燥症)の初期症状についてお話ししました。
今回はさらに一歩踏み込んで、「なぜお口が渇くと、それほどまでに危険なのか?」という根本的な理由について詳しく解説していきます。
当院での日々の診療において、「毎日朝昼晩、きちんと歯磨きをしているのに、最近急にむし歯が増えてしまった」「歯周病が進行して、歯ぐきが頻繁に腫れるようになった」と悩んで来院される患者さんが少なくありません。
ご本人は「自分のブラッシングの仕方が悪いのではないか」「年齢のせいでお口が衰えてしまったのか」とご自身を責めてしまいがちです。しかし、実はその裏に「唾液の減少=ドライマウス」という大きな要因が潜んでいるケースが非常に多いのです。
■ 唾液は「ただの水」ではない?わずか0.5%に隠された驚異の成分
皆さんは、1日にどれくらいの唾液が分泌されているかご存知でしょうか?
健康な成人の場合、なんと1日に1リットルから1.5リットル(大きなペットボトル約1本分!)もの唾液が分泌されています。
唾液の成分の99.5%は水分です。しかし、私たちが注目すべきは、残りのわずか「0.5%」の成分です。この0.5%の中に、カルシウムやリンといったミネラル成分、そしてさまざまな抗菌物質や酵素がギュッと濃縮して含まれています。
私たちが普段何気なく飲み込んでいる唾液は、ただお口の中を濡らしているだけの水分ではありません。むし歯菌や歯周病菌などの外敵からお口を守り、健康を維持するための、強力で精密な「3つの防衛線」を24時間体制で張ってくれている、まさに「天然の万能薬」なのです。
■ 歯学博士が教える、唾液の「3つの防衛線」
それでは、唾液がいかにして私たちのお口を守っているのか、その「3つの防衛線」のメカニズムを具体的に見ていきましょう。
【第1の防衛線】汚れを物理的に洗い流し、バイ菌を撃退する(自浄作用・抗菌作用)
食事をした後、お口の中には食べカスや、細菌の塊であるプラーク(歯垢)が残ります。唾液には、お口の中の汚れを物理的に洗い流す「自浄作用(じじょうさよう)」があります。川の水が流れることで川底が綺麗に保たれるように、唾液が絶えず流れることで、細菌が定着しにくい環境を作っています。
さらに重要なのが「抗菌作用」です。唾液の中には「リゾチーム」や「ラクトフェリン」といった強力な抗菌物質が含まれています。これらが、むし歯菌や歯周病菌、そして口臭の原因となる細菌の増殖を常に監視し、抑え込んでくれているのです。
【第2の防衛線】溶けた歯を元通りに修復し、強化する(再石灰化作用)
私たちが食事や間食をすると、食べ物に含まれる糖分をエサにしてむし歯菌が「酸」を作り出します。この酸によって、お口の中は一時的に酸性に傾き、歯の表面からカルシウムやリンといったミネラル成分が溶け出してしまいます。これを「脱灰(だっかい)」と呼びます。
もしこの状態が続けば、歯はあっという間に溶けて穴が開き、むし歯になってしまいます。しかし、ここで唾液が大活躍します。唾液は、酸性に傾いたお口の中を中性に戻す働き(緩衝作用)を持っています。さらに、唾液の中にたっぷり溶け込んでいるカルシウムやリンを、溶けてしまった歯の表面に再び戻して修復してくれます。
この修復作業を「再石灰化(さいせっかいか)」と呼びます。唾液は、私たちが気づかないうちに、毎日何度も「初期のむし歯を治してくれている」のです。
【第3の防衛線】デリケートなお口の粘膜を包み込み、消化を助ける(粘膜保護作用・消化作用)
唾液には「ムチン」というネバネバ・とろみのある成分が含まれています。このムチンが、お口の中の粘膜や舌、歯の表面を薄いベールのようにコーティングして守ってくれます。これにより、硬い食べ物を咀嚼(そしゃく)したときの摩擦や、熱いものを食べたときの刺激から粘膜が傷つくのを防いでいます。
また、皆さんもご存知の通り、唾液には「アミラーゼ」という消化酵素が含まれており、ご飯やパンなどのデンプンを分解して糖に変え、胃腸の働きをスムーズにする手助けもしています。
■ 防衛線が突破される恐怖!ドライマウスの真のリスク
さて、ここまでお読みいただければ、お口が渇く(ドライマウスになる)ということが、いかに恐ろしい事態であるかお分かりいただけるのではないでしょうか。
唾液が減少し、お口の中が乾燥状態になるということは、これら「3つの強力な防衛線」がすべて突破され、丸腰で戦場に立たされているのと同じです。
汚れを洗い流す水流が止まり、抗菌物質が消え去り、細菌は爆発的に繁殖します。さらに、酸を中和できず、歯の修復(再石灰化)も行われないため、歯は溶け放題となります。粘膜も保護されないため、入れ歯が擦れて痛んだり、口内炎ができやすくなったりします。
「きちんと歯磨きをしているのにむし歯が急増した」「急に歯ぐきが腫れやすくなった」という現象の裏には、唾液という名の防衛バリアが消失し、細菌が猛威を振るい始めているという恐ろしい現実があるのです。特に、歯の根元が露出してくる大人世代にとって、唾液不足による「根面う蝕(歯の根元のむし歯)」は
非常に進行が早く、注意が必要です。
■ 次回の予告:お口の渇きが「命に関わる全身の病気」を引き起こす?
今回は、唾液がいかにしてお口の健康を死守しているか、そのメカニズムをお伝えしました。お口の渇きは、決して軽く見てはいけない重要なサインです。
しかし、ドライマウスの恐怖は、むし歯や歯周病といった「お口の中だけのトラブル」にとどまりません。
次回(第3回)は、視野を全身に広げ、「放置すると命に関わることも。唾液不足が招く『誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)』と全身リスク」について詳しくお話しします。特にシニア世代の方や、ご家族がいらっしゃる方には、絶対に知っておいていただきたい大切な内容です。どうぞお楽しみに。
■ まとめ&よくある質問
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Q. 唾液には具体的にどのような働き(役割)がありますか?
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A. 唾液には大きく分けて「お口の汚れを洗い流す(自浄作用)」「細菌の増殖を抑え込む(抗菌作用)」「酸で溶けた歯を修復する(再石灰化作用)」「粘膜を保護し、消化を助ける」という、お口の健康を守るための非常に重要で多彩な働きがあります。
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Q. 毎日一生懸命歯磨きをしているのに、むし歯になってしまうのはなぜですか?
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A. 磨き残しがあるケースに加えて、「唾液の減少(ドライマウス)」が根本的な原因になっていることが多くあります。唾液が減ってしまうと、歯を修復する力(再石灰化)が圧倒的に弱まり、お口の中がむし歯菌が繁殖しやすい環境に変わってしまうため、どれだけ磨いてもむし歯になりやすくなってしまいます。
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この記事を書いた人
いしかわ歯科 院長
【帯広】いしかわ歯科 院長:石川
(歯科医師・歯学博士)
帯広市で20年以上にわたり地域医療に従事。「予防に勝る治療なし」をモットーに、子供から大人まで、科学的根拠に基づいた歯科治療を提供している。
ご予約・お問い合わせ
[電話番号] 0155-35-2442
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