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【帯広の歯学博士が警告】「たかが口の渇き」が命取りに?シニア世代を脅かす唾液不足と「誤嚥性肺炎」の恐怖(唾液シリーズ第3回)

26.08.19(水)

帯広市のいしかわ歯科(歯科医師・歯学博士)が、ドライマウス(口腔乾燥症)が引き起こす全身への悪影響について解説します。食事中のむせ込みやお茶を飲んだ時の咳き込みがある方は要注意。シニア世代の命を脅かす「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」と唾液不足の恐ろしい関係性について、分かりやすくお伝えします。

■ はじめに:「お茶でむせる」「咳払いが増えた」…その症状、ありませんか?

こんにちは。北海道帯広市の「いしかわ歯科」院長(歯科医師・歯学博士)です。

前回の「唾液シリーズ第2回」では、唾液が持つ「3つの防衛線」が突破されることで、むし歯や歯周病が爆発的に進行するメカニズムについて解説しました。お口が渇くということは、歯を守るバリアが消失した「丸腰の状態」であるとお伝えしましたね。

しかし、「唾液が減る=ドライマウス」の恐怖は、歯を失うことだけにとどまりません。第3回となる今回は、お口の渇きが「私たちの命を脅かす全身の病気」に直結しているという、少し怖い、しかし絶対に知っておいていただきたい真実についてお話しします。

突然ですが、ご自身やご家族の方に、最近こんな変化はありませんか?

  • お茶や汁物を飲んだ時に、よく「むせる」ようになった

  • 食事中になんとなく咳き込むことが増えた

  • 食後に「エヘン」と咳払いをして、喉の引っかかりを取ろうとすることが多い

もし当てはまるなら、それはお口から全身へと忍び寄る「非常に危険なサイン」かもしれません。

■ シニア世代の命を奪う「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」とは?

皆さんは「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」という病名を聞いたことがあるでしょうか。現在、日本人の死因の上位を常に占めているのが「肺炎」ですが、実はご高齢の方の肺炎の大部分が、この「誤嚥性肺炎」だと言われています。

私たちが食べ物や飲み物、あるいは自分の唾液を飲み込む際、健康な状態であれば、喉の奥のフタ(喉頭蓋)がパッと閉まり、食べ物は「食道」を通って「胃」へと安全に運ばれます。

しかし、加齢や筋力の低下によって、この「飲み込む力(嚥下機能)」や「フタを閉めるタイミング」が鈍くなってくると、誤って「気管」から「肺」へと異物が入り込んでしまうことがあります。これを「誤嚥(ごえん)」と呼びます。

この誤嚥によって、お口の中の細菌が肺に直接入り込み、肺の中で激しい炎症を起こしてしまう病気こそが「誤嚥性肺炎」なのです。

■ 唾液不足が「最悪の事態」を引き起こす致命的な理由

「誤嚥が怖いのは分かったけれど、それと唾液の減少(ドライマウス)がどう関係するの?」と疑問に思われるかもしれません。実は、ここが最も恐ろしいポイントです。

第2回のブログで、唾液にはお口の中の汚れを洗い流し、細菌の増殖を抑え込む強力な「自浄作用・抗菌作用」があるとお話ししました。

お口が渇いて唾液が減っているドライマウスの状態では、この抗菌作用がまったく働きません。つまり、お口の中は「歯周病菌などの悪玉菌が数億、数十億という単位で異常繁殖した、非常に不衛生な状態」に陥っているのです。

もし、この「大量の細菌が繁殖したドロドロの唾液」を誤嚥してしまったら、どうなるでしょうか。

さらに恐ろしいことに、誤嚥は食事中だけに限らず、夜眠っている間にも無意識のうちに少しずつ起きています(不顕性誤嚥:ふけんせいごえん)。お口が渇き、細菌が爆発的に増えた状態のまま眠りにつくと、その細菌だらけの唾液が、夜な夜な気管を伝って肺へと流れ込んでいくのです。

「たかが口が渇くだけ」と放置していると、それがご自身の命を危険にさらす肺炎の直接的な引き金になってしまいます。

■ 歯周病菌は血液に乗って、全身の臓器を攻撃する

唾液不足による全身への悪影響は、肺(肺炎)だけではありません。

唾液が減って歯周病が進行すると、歯ぐきは常に炎症を起こして出血しやすくなります。この「出血している歯ぐきの血管」から、お口の中で増殖した歯周病菌が血液中に侵入してしまうのです。

血液に乗った細菌やその毒素は、全身を巡りながら各地で悪さをします。

例えば、血管の壁に取り付いて動脈硬化を進行させ、「心筋梗塞」や「脳梗塞」のリスクを急激に高めることが分かっています。また、インスリンの働きを阻害し、「糖尿病」を悪化させる大きな原因になることも、近年の医学研究で明確に証明されています。

■ 次回の予告:大人の問題だけじゃない?子どもと唾液の深い関係

「お口は命の入り口」という言葉がありますが、まさにその通りです。

唾液をしっかり分泌させ、お口の中を清潔に保つことは、単に「歯を残す」ためだけでなく、「全身の健康と命を守る」ための最重要課題なのです。ご自身はもちろん、離れて暮らすご両親など、身近なご高齢の方のお口の渇きには、ぜひ注意を払ってあげてください。

さて、次回(第4回)はガラリと視点を変え、「【帯広の歯学博士が提唱】大人の問題だけじゃない!子どもの『強い歯と顎』を育てる唾液と噛む習慣」についてお話しします。

「唾液の悩みはシニア世代のもの」と思われがちですが、実はお子様の健やかな成長にも、唾液は深く、そして極めて重要な関わりを持っているのです。ぜひご家族皆様でお読みいただきたい内容です。お楽しみに!

■ まとめ&よくある質問

  • Q. ドライマウス(唾液の減少)と誤嚥性肺炎にはどのような関係がありますか?

    • A. 唾液が減ると、お口の中の細菌を洗い流す・殺菌する力が弱まり、むし歯菌や歯周病菌が異常繁殖します。その「細菌が大量に含まれた唾液」を誤って気管から肺に飲み込んでしまう(誤嚥する)ことで、肺の中で激しい炎症が起き、重篤な肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こすリスクが跳ね上がってしまいます。

  • Q. 誤嚥性肺炎や全身の病気を防ぐには、どうすればいいですか?

    • A. まずはこまめな水分補給やよく噛む食事で「唾液をしっかり出すこと」。そして何より重要なのが、お口の中の細菌(バイオフィルム)そのものを減らしておくことです。毎日の丁寧な歯磨きに加え、歯科医院での定期的な専門ケアでお口を清潔に保つことが、肺炎や心筋梗塞、糖尿病の悪化を防ぐ「命を守るケア」に直結します。

 

この記事を書いた人

いしかわ歯科 院長

【帯広】いしかわ歯科 院長:石川

(歯科医師・歯学博士)

帯広市で20年以上にわたり地域医療に従事。「予防に勝る治療なし」をモットーに、子供から大人まで、科学的根拠に基づいた歯科治療を提供している。

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