【歯科医師・歯学博士が解説】ストローマグは要注意?「コップ飲み」が育てる正しい舌のポジションと歯並び~0歳からの健口育成シリーズ5~
26.05.05(火)
【歯科医師・歯学博士が解説】ストローマグは要注意?「コップ飲み」が育てる正しい舌のポジションと歯並び~0歳からの健口育成シリーズ5~
こんにちは。いしかわ歯科です。
これまで「0歳からの健口(けんこう)育成シリーズ」として、お口のタッチケア(第1回)、抱っこや寝かせ方の姿勢(第2回)、離乳食でのスプーンの使い方(第3回)、そして前回はお口ポカンと鼻呼吸(第4回)についてお話ししてきました。
今回は、日々の生活に欠かせない「水分補給(飲み方)」に焦点を当てます。
外出時や車内でもこぼれにくく、親御さんにとって非常に便利な「ストローマグ」。しかし、歯科の視点から「お口の発達」を考えると、少し注意が必要なアイテムでもあります。今回は、将来のきれいな歯並びと正しいお口の機能を育てるための「コップ飲み」の重要性について解説します。
便利な「ストローマグ」、実はお口の機能発達の落とし穴?
赤ちゃん用品店に行くと、色とりどりの可愛らしいストローマグが並んでいます。お出かけの際など、こぼれる心配が少なく本当に助かるアイテムですよね。決して「絶対に使ってはいけない」というわけではありません。
しかし、水分補給を「ストローマグに依存しすぎる」と、お口周りの筋肉や、舌の正しい発達を妨げてしまうリスクがあります。
舌の突き出し癖(異常嚥下癖)のリスク
赤ちゃんがおっぱいを飲むとき、舌を前後に動かしてしごくように飲みます(乳児型嚥下)。ストローで飲み物を吸い上げるときも、これと似たようなお口の動きになりがちです。ストローを唇ではなく「舌と上あご」で挟み込み、舌を前に突き出して飲む癖がついてしまう子が多く見られます。
この「舌を前に突き出す癖」が残ったまま成長すると、ものを飲み込むたびに舌で前歯を裏側から押し出す力が働き、将来的に「出っ歯(上顎前突)」や「開咬(奥歯を噛んでも前歯が開いてしまう状態)」といった歯並びの乱れにつながりやすくなります。
また、前回のブログでお伝えした「お口ポカン(口呼吸)」の原因となる「低位舌(舌が下あごに落ちている状態)」を引き起こす要因にもなります。
「コップ飲み」がお口の機能をぐんぐん育てる理由
そこで私たちが推奨しているのが、なるべく早い段階からの「コップ飲みの練習」です。コップから水分を飲むという行為は、実はとても高度なお口の筋力トレーニングになります。
1. 上あごに舌がピタッとくっつく「正しい嚥下」の獲得
コップで飲む際、人間の体は自然と上唇を引き下げ、下唇でコップの縁を支えます。そして、一口分の水分を口に含むと、舌の先が上あご(前歯の少し後ろの膨らみ)にピタッとくっつき、ゴクンと飲み込みます。これを「成熟型嚥下(大人の飲み込み方)」と呼びます。
この「舌が上あごにくっつくポジション」こそが、上あごの骨を横に広げ、永久歯がきれいに並ぶためのスペースを作る最大の土台となります。
2. 口輪筋(お口周りの筋肉)の強化
コップの縁を唇でしっかり捉え、こぼれないように保持することで、お口周りの筋肉(口輪筋)が鍛えられます。口輪筋が鍛えられると、普段からしっかり唇を閉じられるようになり、免疫力を高める「鼻呼吸」の定着にも直結します。
焦らなくて大丈夫!コップ飲みのステップアップ術
「コップ飲みは大事だとわかったけれど、こぼして後片付けが大変…」という親御さんの声が聞こえてきそうです。最初から上手に飲める子はいません。焦らず、段階を踏んで進めていきましょう。
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ステップ1:スプーンすすり(離乳食初期〜)
まずは、離乳食用のスプーン(くぼみが浅いもの)に白湯や麦茶を少し入れ、下唇にそっと乗せてあげます。赤ちゃんが自分から上唇を下ろして「すする」のを待ちます。流し込むのではなく、自分でお口に取り込む練習です。
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ステップ2:おちょこ・小皿飲み(離乳食中期〜)
スプーンに慣れたら、縁が薄くて広がりがあるお皿や、小さなおちょこ(プラスチック製が安全です)を使います。ほんの少しだけ水分を入れ、下唇に当てて傾けます。
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ステップ3:小さなコップ飲み
両手で持てる小さなコップを用意します。中身は一口分(底から数ミリ程度)だけにします。こぼれても被害が最小限で済みますし、赤ちゃんも「一口量」を学習しやすくなります。
帯広・十勝で子育てを頑張るパパ・ママへ
子育て中は、ただでさえ毎日が慌ただしく過ぎていきます。お茶をこぼされて床を拭く時間すら、大きな負担に感じる日もあるでしょう。
外出時や、親御さんが疲れている時は、無理せずストローマグを頼っても全く問題ありません。大切なのは「メリハリ」です。「おうちで落ち着いて食事ができる時だけはコップ飲みの練習をする」など、できる範囲で少しずつ「大人の飲み方」への移行をサポートしてあげてください。
十勝ののびのびとした環境のように、お子様のペースに合わせて大らかに見守りながら、一生の宝物となる「正しいお口の機能」を育てていきましょう。
お口の開け方、飲み込み方、離乳食の進め方などで少しでも気になることがあれば、いつでも当院にご相談ください。定期検診を通して、むし歯予防だけでなく「機能の成長」もしっかりとサポートさせていただきます。
【いしかわ歯科からのお知らせ】
当院では、患者様により快適に受診していただけるよう、2月から新しい電子カルテシステムを導入し、自動精算機も稼働を開始いたしました。お会計の待ち時間が短縮され、お子様連れでもよりスムーズにご案内が可能となっております。
また、4月より診療時間が一部変更となり、土曜午後が隔週で休診となります。ご来院の際はご確認をお願いいたします。
この記事を書いた人
いしかわ歯科 院長
【帯広】いしかわ歯科 院長:石川
(歯科医師・歯学博士)
帯広市で20年以上にわたり地域医療に従事。「予防に勝る治療なし」をモットーに、子供から大人まで、科学的根拠に基づいた歯科治療を提供している。
ご予約・お問い合わせ
[電話番号] 0155-35-2442
帯広市西21条南2丁目26-3 Googleマップで見る
※本記事は情報提供を目的としており、個別の診療行為に代わるものではありません。お子様の呼吸や歯並びに関するご不安は、歯科医師または専門医にご相談ください。





