知覚過敏はなぜ起こる?歯がしみる原因と対策を徹底解説
25.10.24(金)
「冷たいものが歯にしみる」「歯磨きするとキーッとなる」といった経験はありませんか?もしかしたらそれは、知覚過敏かもしれません。虫歯ではないのに歯がしみるのは、とても不快ですよね。この記事では、知覚過敏が起こる原因と、自分でできる対策、歯科医院での治療法まで、詳しく解説していきます。
知覚過敏が起こるメカニズム
知覚過敏は、歯の表面が何らかの原因で傷つき、歯の内部にある象牙質が露出することで起こります。
歯の構造
私たちの歯は、主に3つの層からできています。
- エナメル質: 歯の一番外側にある、人体で最も硬い組織です。
- 象牙質: エナメル質の内側にある層です。
- 歯髄(神経): 歯の中心部にある、神経や血管が通っている部分です。
健康な歯は、エナメル質が象牙質をしっかりと覆っているため、外部からの刺激が歯髄に伝わることはありません。
知覚過敏の原因
しかし、次のような原因でエナメル質やその下にあるセメント質(歯根部を覆う組織)が失われると、象牙質がむき出しになってしまいます。
- 歯周病: 歯周病が進行すると歯茎が下がり、歯根部分が露出します。歯根部分はエナメル質で覆われていないため、知覚過敏が起こりやすくなります。
- 過度なブラッシング: 歯磨きの力が強すぎると、エナメル質や歯茎が削れてしまいます。特に硬い歯ブラシの使用や、研磨剤が多く含まれる歯磨き粉を日常的に使うことも原因となります。
- 歯ぎしり・食いしばり: 強い力が歯にかかることで、エナメル質にひびが入ったり、削れたりすることがあります。
- 酸蝕症(さんしょくしょう): 飲食物に含まれる酸が原因で、エナメル質が溶けてしまう病気です。炭酸飲料、柑橘系の果物、お酢などが挙げられます。
- 加齢: 加齢とともに歯茎が下がり、知覚過敏が起こりやすくなります。
象牙質には、「象牙細管(ぞうげさいかん)」と呼ばれる無数の小さな管が通っています。この管は歯髄とつながっていて、外部からの刺激(冷たいもの、熱いもの、歯ブラシの接触など)が直接歯髄に伝わってしまうことで、「キーン」としたしみる感覚が起こるのです。
知覚過敏のセルフケア:今すぐできる5つの対策
知覚過敏は、日々の生活習慣を見直すことで改善できるケースも多いです。
1. 歯磨きの見直し
歯磨き粉をつけずに歯を磨く「空磨き」を試してみましょう。研磨剤入りの歯磨き粉は、象牙質をさらに削ってしまう可能性があります。歯磨き粉は、歯垢を落とすのが目的ではないので、つけなくても問題ありません。
もし歯磨き粉を使う場合は、知覚過敏用の歯磨き粉を選んでください。これらの歯磨き粉には、象牙細管を塞いでくれる成分(硝酸カリウム、乳酸アルミニウムなど)が含まれています。
また、ブラッシングの力加減も重要です。ゴシゴシと強く磨かず、優しい力で、歯周ポケットに歯ブラシの毛先を当てるように磨きましょう。歯ブラシは、毛先が広がっていない、柔らかめのものを選ぶのがおすすめです。
2. 食生活の改善
酸性の飲食物を摂りすぎると、エナメル質が溶けやすくなります。炭酸飲料や柑橘系のジュースを頻繁に飲む習慣がある方は、摂取量を減らしたり、飲んだ後に水で口をすすぐようにしたりすると良いでしょう。
3. 歯ぎしり・食いしばりの対策
就寝中の歯ぎしりや食いしばりは、自分ではコントロールできません。歯科医院でマウスピースを作ってもらうと、歯への負担を軽減できます。また、ストレスや肩こりも原因となることがあるため、リラックスする時間を作ることも大切です。
4. 定期的な歯科検診
歯垢や歯石が付いていると、知覚過敏を悪化させる原因になります。歯科医院で定期的にクリーニングを受けることで、歯垢を徹底的に除去し、清潔な状態を保ちましょう。
5. 症状に合わせたケア
歯がしみるからといって、歯磨きを避けていると、歯垢が溜まり、さらに症状が悪化する可能性があります。しみる部分を避けるのではなく、歯垢が残らないように、丁寧に歯磨きを続けることが大切です。
改善しない場合は歯科医院へ
セルフケアを続けても症状が改善しない場合や、しみる症状がひどい場合は、歯科医院を受診しましょう。歯科医院では、知覚過敏の根本原因に合わせた治療を受けることができます。
1. 知覚過敏抑制剤の塗布
歯の表面に薬剤を塗って、むき出しになった象牙細管を塞ぎ、外部からの刺激をシャットアウトする処置です。この処置は短時間で終わり、即効性がある場合が多いです。
2. レジン(歯科用プラスチック)による修復
歯の根元部分が削れてくぼんでいる場合は、その部分をレジンと呼ばれる歯科用プラスチックで埋める処置を行います。これにより、象牙質を物理的に保護し、しみるのを防ぎます。
3. 歯周病治療
歯周病によって歯茎が下がってしまっている場合は、まず歯周病の治療を行うことが最優先となります。歯周病が改善することで、知覚過敏の症状も落ち着いてくることが多いです。
4. 根管治療(神経を抜く処置)
象牙質の削れが深く、歯の神経が透けて見えるほどひどい場合は、神経を取る根管治療を行うことがあります。これは最終手段であり、他の治療法で改善が見られない場合に選択されます。
知覚過敏を放置するとどうなる?
「ちょっとしみるだけだから」と知覚過敏を放置してしまうと、症状が悪化するだけでなく、虫歯と見分けがつきにくくなることがあります。また、痛みから歯磨きを怠ると、歯垢が溜まり、虫歯や歯周病のリスクを高めてしまいます。
知覚過敏は、早期に原因を特定し、適切なケアを行うことで改善できる症状です。もし歯がしみてお悩みなら、まずは歯科医院に相談してみましょう。専門家のアドバイスを受け、ご自身に合った対策を始めることが、健康な歯を保つための第一歩です。
帯広市 歯科 歯学博士 歯科医師 いしかわ歯科
医院長 石川





