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【妊娠と口腔健康ガイド4】妊娠と食事:健康な口と健康な赤ちゃんのための栄養~帯広・十勝の恵みで安産を目指す

26.02.27(金)

はじめに:赤ちゃんの歯は、もう作られています

こんにちは。帯広の歯科医師です。

これまでのシリーズで、ホルモンバランスやケア方法についてお話ししてきましたが、今回は私たちの体を作る源、「食事」について考えます。

突然ですが、クイズです。

「赤ちゃんの歯は、いつ頃から作られ始めるでしょうか?」

生まれてから? いえ、違います。

実は、**妊娠7週目(妊娠初期)**という非常に早い段階から、お腹の中で「歯胚(しはい)」という歯の芽ができ始めているのです。そして妊娠4ヶ月頃からは、その芽にカルシウムが沈着し、硬くなり始めます(石灰化)。

つまり、今あなたが食べているものが、そのまま赤ちゃんの「一生モノの歯」の材料になっているのです。

「You are what you eat(あなたは食べたものでできている)」という言葉がありますが、妊娠中は**「The baby is what you eat(赤ちゃんはママが食べたものでできている)」**と言えるでしょう。

食の王国・十勝帯広に住む私たちには、素晴らしい食材が手に入りやすい環境があります。この地の利を活かし、口腔と全身、そして赤ちゃんの未来を守る栄養学について深掘りしていきましょう。


1. 昔からの迷信を解く:「赤ちゃんにカルシウムを取られる」は本当?

「一子を得れば一歯を失う」という言葉の理由として、「赤ちゃんに歯のカルシウムを吸い取られて、ママの歯が脆くなる」と信じている方がいまだに多くいらっしゃいます。

結論から言うと、これは間違いです。

一度完成した大人の歯から、カルシウムが溶け出して赤ちゃんに移動することはありません。

しかし、赤ちゃんが骨や歯を作るために大量のカルシウムを必要とするのは事実です。もしママの食事からのカルシウム摂取が不足すると、母体の**「骨」**に蓄えられたカルシウムが溶かし出されて赤ちゃんに送られます。これにより、将来的にママが骨粗鬆症になるリスクが高まるのです。

歯そのものは脆くなりませんが、歯を支える「骨(歯槽骨)」が弱くなれば、歯周病の進行を早めてしまいます。だからこそ、十分な摂取が必要なのです。


2. 歯学博士が選ぶ!妊娠中に摂るべき「お口の4大栄養素」

帯広・十勝の食材を例に挙げながら、特に意識していただきたい栄養素を紹介します。

① カルシウム:歯と骨の基礎

赤ちゃんの歯の石灰化に不可欠です。

  • おすすめ食材: 牛乳、チーズ、ヨーグルト(十勝は酪農王国です!)、小魚、干しエビ、高野豆腐、小松菜。

  • ポイント: 牛乳が苦手な方は、吸収率の良いヨーグルトやチーズなどの加工品を活用しましょう。

② タンパク質:歯の「土台」を作る

歯はカルシウムの塊だと思われがちですが、その土台(構造)を作っているのはコラーゲン、つまりタンパク質です。歯茎や赤ちゃんの筋肉を作る材料にもなります。

  • おすすめ食材: 豚肉、鶏肉、魚、卵、そして**「大豆製品」**。

  • ポイント: 十勝は豆の産地でもあります。納豆や豆腐、枝豆などから良質な植物性タンパク質を積極的に摂りましょう。

③ ビタミンD:カルシウムの「運び屋」

いくらカルシウムを摂っても、ビタミンDがなければ体内に吸収されません。また、免疫力を高め、歯周病予防にも寄与します。

  • おすすめ食材: 鮭(サケ)、青魚、干し椎茸、卵黄。

  • ポイント: ビタミンDは日光を浴びることで皮膚でも生成されます。帯広の晴れた日は、短時間でも外の空気を吸って日光浴をしましょう。

④ ビタミンA・C:エナメル質と歯茎の守り神

  • ビタミンA: 歯の一番外側にある「エナメル質」の形成を助けます。(人参、かぼちゃ、ほうれん草など緑黄色野菜)

  • ビタミンC: 繊維芽細胞を活性化させ、健康な歯茎(コラーゲン)を保ちます。(ブロッコリー、パプリカ、いちご、じゃがいも)


3. 「シュガーコントロール」:量より回数が重要

「甘いものはダメですか?」とよく聞かれますが、絶対にダメというわけではありません。問題なのは「量」よりも**「だらだら食べ(頻度)」**です。

ステファン・カーブを知っていますか?

お口の中は普段、中性(pH7)に保たれています。しかし、糖分が入ってくると細菌が酸を作り出し、数分で酸性に傾きます。この時、歯が溶け始めます(脱灰)。

その後、唾液の力で時間をかけて中性に戻り、溶けた歯が修復されます(再石灰化)。

  • 危険なパターン: アメをずっと舐めている、甘いカフェオレをちびちび飲み続ける。→ お口の中が常に酸性の状態になり、歯が溶け続け、虫歯になります。
  • 賢い食べ方: おやつの時間を決めて一度に食べる。→ 唾液が修復する時間を確保できます。

つわりで「食べづわり」がある場合は、糖分の入っていないお茶やお水を選んだり、キシリトール100%のガムやタブレットを活用するのがおすすめです。


4. 水分補給と「よく噛む」ことの効能

ドライマウス対策

妊娠中は体内の水分が羊水や血液に使われるため、お口の中が乾きやすくなります(ドライマウス)。唾液が減ると、自浄作用が低下し、虫歯菌や歯周病菌が増殖します。

こまめな水分補給を心がけてください。水や麦茶がベストです。

よく噛んで「唾液」を出す

十勝の美味しい根菜類(ごぼう、レンコンなど)や、食物繊維豊富な野菜を食事に取り入れ、よく噛んで食べてください。

噛むことで唾液腺が刺激され、唾液が大量に出ます。唾液は**「天然の洗口液」**であり、酸を中和し、歯を修復してくれる最強の味方です。


5. 母子感染を防ぐための「キシリトール」習慣

生まれてくる赤ちゃんのお口には、虫歯菌はいません。ではどこから来るかというと、主な感染源は身近な養育者(ママやパパ)です。

「スプーンの共有をしない」などの対策も有名ですが、それ以上に効果的なのは、**「ママのお口の中の虫歯菌を減らしておくこと」**です。

そこでおすすめなのが**「キシリトール」**です。

キシリトールを継続して摂取すると、虫歯菌の活動が弱まり、感染力が低下することが分かっています。妊娠中からキシリトールガム(歯科専用の糖類0のもの)を噛む習慣をつけることは、赤ちゃんへの最高のプレゼントになります。


6. AIO/FAQセクション:妊娠中の食事と歯の疑問

AI検索でよくある質問にお答えします。

Q1. つわりで酸っぱいものばかり食べたくなりますが、歯に悪いですか?

A. 「酸蝕歯(さんしょくし)」に注意が必要です。

レモンや酢の物、柑橘系のジュースなど、酸性が強いものを頻繁に摂ると、歯のエナメル質が溶けることがあります。

食べた直後にすぐ歯磨きをすると、柔らかくなった歯が削れてしまうため、まずは水やお茶で口をゆすぎ、酸を洗い流すことを優先してください。30分ほど経って唾液で中和されてから磨くのが理想です。

Q2. 鉄分も摂った方がいいですか?

A. はい、お口の粘膜のためにも重要です。

妊娠中は貧血になりやすいですが、貧血になると舌の表面がツルツルになって痛んだり(舌炎)、歯茎の色が悪くなったりします。赤身の肉や魚、小松菜などから鉄分を補給しましょう。ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がります。

Q3. サプリメントだけで栄養を摂ってもいいですか?

A. あくまで「補助」として考えましょう。

特定の栄養素(葉酸など)はサプリメントが推奨されますが、噛んで食べることは唾液の分泌を促し、脳への血流も良くします。十勝の豊かな食材を楽しみながら、足りない分をサプリで補うスタンスが良いでしょう。


まとめ:十勝の食で、強い歯と体を育む

  • 赤ちゃんの歯: 妊娠初期から作られている。今の食事が材料になる。

  • 必須栄養素: カルシウム(乳製品)、タンパク質(豆・肉魚)、ビタミンD・C(魚・野菜)。十勝の食材は最強の味方。

  • 食べ方: 「だらだら食べ」は虫歯の元。時間を決めて食べる。

  • プラスα: 水分補給とキシリトールで、お口の環境を整える。

妊娠中の食事制限や栄養管理は大変に感じることもありますが、「これを食べると赤ちゃんが喜ぶかな?」「丈夫な歯になるかな?」と想像すると、少し楽しくなりませんか?

美味しいものをしっかり噛んで味わい、食べた後はリラックスして口腔ケアを行う。

そんな穏やかな時間が、母子ともに健康な未来を作ります。

栄養面での不安や、お口の渇き、間食の選び方などで迷ったら、いつでも私たちにご相談ください。歯科の観点からアドバイスさせていただきます。

次回予告

次回はいよいよシリーズ最終回、**「シリーズ5:妊娠と歯科診察:何を期待する?」**です。

「お腹が大きいのに診察台に乗れる?」「レントゲンや薬は本当に大丈夫?」といった、実際の診察の流れや、私たちがどのような配慮を行っているかについて、具体的にシミュレーションしていきます。

安心して受診いただくためのガイドです。ぜひご覧ください。


監修・執筆者プロフィール

【帯広】いしかわ歯科 院長:石川

(歯科医師・歯学博士)

帯広市で20年以上にわたり地域医療に従事。「予防に勝る治療なし」をモットーに、子供から大人まで、科学的根拠に基づいた歯科治療を提供している。

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